金魚鉢
私は最初、優ちゃんと付き合ったことをなっちゃんと兄以外には内緒にしようといった。
 それから、優ちゃんとこんな会話をした。

「なっちゃんって、本多奈津美さんのことだよね?」

「うん。なっちゃんとは幼稚園からの友達でね。あんまり秘密は作りたくないの」

 すると、優ちゃんはちょっと困ったような顔になって、

「うーん、それは全然良いんだけど。……僕は別に隠さなくてもいいと思うんだ」

「どうして?」

「逆に、どうして琴葉ちゃんは内緒にしておきたいの?」

「だって……」

 徐々に下がっていく私の顔を、優ちゃんが覗き込んでくる。

 その端正な顔立ちに一瞬だけ、息を呑んで、

「……優ちゃんは、私と違って人気だから。その……」

 そこまで言うと、優ちゃんは納得したように微笑んで、

「あぁ、そういうことか。琴葉ちゃんは、いじめられるかもしれないって心配してるんだよね」

「えっと、いじめられるとまでは思わないけど、何かしら言われるのかなって……」

「心配しなくても、大丈夫だよ。僕が琴葉ちゃんを守るから。それに、隠してばれちゃった時の方が何か言われるかもしれないしね」

 そう言って、優ちゃんは私の手をそっと握った。

 私の心臓はどきっと跳ね上がって、そのまま思わず頷いてしまったんだよね……。
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