君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「でも、落合先生も久世先生も舞花の事情を知っているから、無理にとは言えないって言ってくれてるの。そんな気になれないなら、なかったことにしようって」
智志くんとの結婚がだめになって、早二か月。挙式の予定は六月の頭だった。
日に日に気持ちは穏やかさを取り戻しているけれど、完全復活したわけではない。
あんな酷い仕打ちを受けたのだ。
幸せの絶頂に立つ背中を思いっきり突き飛ばされて落ちていくような、そんな思いだった。
これから一生引きずる覚悟だってしている。
「どう、かしら?」
「どうって言われても……」
正直、快く受け入れるような気にはなれない。
返事に詰まる私を、母は正面からじっと見つめてくる。
目の下に目立つくま。普段はメイクをして隠しているけど、家にいるときのふとした瞬間に疲れを感じさせる。
結婚破棄の一件があってから、母は未だ私を気遣いながらも自分自身にも覇気がない。
「そうよね……まだ、そんな気にはなれないわよね」
伏せた目はわずかに笑みを滲ませているものの、どこか希望を失ったように光を無くす。
そんな母の顔を目にした途端、自然と「やっぱり」と声を上げていた。