君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
心の準備をする時間は十分にあったはずなのに、いざ対面するとなると一気に緊張が高まる。どちらも初対面ではないのに、顔を合わせただけで鼓動がうるさい。
母の半歩うしろに続いてついていく先に見えたのは、こっちに向かって片手を上げる落合先生と会釈をする久世先生の姿。
久世先生の端整な顔を久しぶりに目の当たりにして、本当に今日のお相手が彼なのだと実感が湧いた。
「すみません、お待たせしました」
「いや、我々も今少し前に来たばかりだよ」
「そうでしたか」
母と落合先生のやり取りを後方で聞いていると、落合先生の横に立つ久世先生と視線がバチっと重なる。
わずかに肩を揺らして驚いてしまった私とは正反対に、久世先生のほうは微笑を浮かべてじっと私を見つめた。
挨拶もそこそこに予約をしているというお店に向かう。
落合先生が予約を入れてくれていたのは、日本料理のレストラン。
ルームチャージまでしてもらっていたようで、案内されたのはウッドフロアに掘り炬燵の落ち着いた個室の席だった。
私のとなりに母、その向かいに落合先生。そして、私の正面には久世先生が腰を下ろす。
会席のコースメニューで予約されているらしく、ビールと共に先付けが用意された。