君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
お世辞とわかっていても、その類の内容で褒められることは苦手。
顔の前でぶんぶんと手を振り「いえ、そんなことは」と否定して、間を持たせるように再びビールをひと口流し込む。
「私は昔からお世辞は言わない主義なんだ。正直者だから」
落合先生の言葉で母がくすっと笑い、場の空気がいい感じに和む。
「さぁ、食べながらゆっくり話をしよう」
落合先生のひと声でそれぞれが箸を手に取った。
「偶然にも、ふたりはもう顔見知りのようだからな。でも、自己紹介くらいはしておいてもいいだろう」
落合先生がそう言うと、久世先生は「そうですね」と頷く。そして、正面の私へと視線を寄越した。
「久世公宏です」
「あ……都築舞花です」
下の名前、公宏さんっていうんだ。
病院で白衣の胸元にネームプレートらしきものをつけていた記憶はあったけど、名前を確認する余裕もなかった。