君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
今日会うまでの間、どこに出かけようかという話をお互いの仕事の合間をぬって話し合い、決まった行き先は動物園。
それだけ聞くと私が要望したように思われるだろうけど、候補を出したのは久世先生のほうだ。
【本物のかわうそ観にいってみる?】そう提案してくれた。
前に食事に行ったときにパペットの話の流れから、機会がなく本物のかわうそを見たことがないと話したことを覚えていてくれたようだ。
私が行ったことがないとはいえ、久世先生が動物園を案に出してくれるとは思わなかった。
久世先生のような人はどこにデートに行くのだろうと、きっと大人なオシャレなプランを提案されるのだろうと約束が決まるまであれこれ身構えてドキドキしていた。
それが私の目線で、何気ない会話から行く場所を決めてくれたことは嬉しかったしホッとした。
「かわうそ、見れるの楽しみです」
「今日は舞花のかわうそ記念日になるな」
会話の中でナチュラルに出てきた自分の名前に心臓が反応する。
お付き合いが始まってから、気付けば〝舞花さん〟から〝舞花〟と呼ばれるようになっていた。
トークアプリ上での会話からすでに〝さん〟はなくなっていて、初めて電話で話したときにはもう普通に舞花と呼ばれた。
顔を合わせて間近で呼ばれるのはこれが初めてのことで、改めて意識してしまう。