君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
大きな渋滞もなく都内の動物園に到着したのは、出発から三十分近くが経った頃。
駐車場に車を停め、動物園のエントランスへと向かって駐車場内を歩いていく。
ついていくような形で半歩後ろのとなりを歩いていると、突然久世先生側の手を掴み取られた。
肩を揺らして顔を上げた私を、久世先生は振り向き微笑と共に見下ろす。
「迷子にならないように?」
「っ、まっ、迷子になんてならないです!」
冗談で言われているのは雰囲気でわかるのに、恥ずかしさを紛らわせるように言い返す。ドッドッと鼓動が大きな音を立て、顔も熱い。
久世先生はそんな余裕のない私の態度を全て受け止めるようにフッと笑った。
普段、子どもたちとばかり繋いでいる私の手。
男の人とこうして手を繋いで歩くことは生まれて初めてのことだ。
結婚を破棄した彼とも、手を繋いで歩くことはなかった。
だから、これが手繋ぎ初体験。
いつも小さな手とばかり握っているから、久世先生の大きくて硬い手に自然と緊張が高まる。
休日ということもあって、動物園は入口ゲート前から賑わいを見せていた。