君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


 動物園に来るのなんて、いつぶりのことだろうと考える。

 たぶん、もう記憶にもない子どものころに来たのが最後だ。

 チケットを買い求めるために離された手も、またすぐに繋ぎ直される。

 鼓動を弾ませながら久世先生をちらりと見上げて、改めてこれは夢ではないのかなと漠然と思った。

 整った顔立ちにこのスタイルの良さ。並んで歩いてしまうと、誰が見たって釣り合わない地味で子どもっぽい女性を連れていると思うに違いない。

 その証拠に、さっきから行き違う女性たちの視線が向けられていくのを感じている。


「舞花、何から見たい?」


 片手に広げて見ていた園内マップを私に差し出し久世先生は訊く。


「そうですね……あ、じゃあここから近いパンダから見ましょうか?」

「オッケー。かわうそはまだいいのか?」

「はい。お楽しみにとっておきます」

「お。今日のメインメニューってとこか」


 そんな会話を繰り広げながら人気のパンダ展示から見ていく。

 お昼に着いたこともあり途中園内で簡単に軽食を取って、順に動物たちを見ていく。

 パンダから始まり、定番のゾウ、サル山はついじっと見入ってしまう。

 それからペンギンやカンガルーを見て、アフリカの動物ゾーンを回り、ゴリラやトラと迫力のある動物たちを見ていった。

 そして……。

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