君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
必死に声を上げているけれど、通りがかる人たちは気には留めながらも男の子に声はかけない。
近年はご時世なのか慎重な大人が多く、ひとりでいる子どもを助けるという行動を取る人が少なくなっていると聞く。
下手に声をかけたら、と思ってしまうようだ。
「おい、舞花」
だけど私は頭で考えるよりも先に体が動く。
するっと公宏さんの手を離れ、一目散にいよいよ泣き始めてしまった男の子に駆け寄った。
「どうしたの? ママいなくなっちゃったのかな?」
私に話しかけられた男の子は、一瞬びくっと肩を揺らし警戒したような目をする。
すぐさま地面に膝をつき、男の子の目線になって笑顔を見せた。
「大丈夫だよ。ママ、すぐに見つかるよ。一緒に捜すからね」
ゆっくりとわかりやすく、簡潔に話す。
幼児と会話する上で大切なことを守り、安心させるように話しかける。
男の子は「ママいなくなっちゃったの」と、自分の事情を私に伝えてくれた。
「あのね、ゾウさん見てたらママいなくなっちゃってたの」
「そっか。お名前、言えるかな?」
「はるとー!」
「はるとくんか。よし、じゃあ、はるとくんのママ一緒に捜そうね」
涙を止めてくれたはるとくんにホッとしたのもつかの間、迷子は今の状況どう対応するのが一番いいか考える。