君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「あ……」
入場ゲート近くで舞花が売店に目を留めたのに気づく。
動物のぬいぐるみが所狭しと並べられていて、舞花のパペットを思い出した。
「見ていくか?」
「いいんですか? 見たいです!」
パンダをメインに、ゾウやキリンなどの定番の動物、鳥類や爬虫類なんかのぬいぐるみもある。
「あっ、これは!」
その中で、舞花が反応したのはやっぱりかわうそ。本当に好きなんだな、とつい顔が綻ぶ。
「私の持ってるかわちゃんより色が薄いブラウンですね、これ」
「連れて帰る?」
「はい! 連れて帰りましょう」
舞花が手に取ったかわうそのパペットをひょいと取り上げ、ちょうど人のいないレジに持っていく。
相変わらず「あの、公宏さん、お金」と背後霊のようについてきたけど、軽く受け流して買い求めたかわうそを手渡した。
「いいんですか? 買ってもらってしまって……」
「もちろん。今日の思い出ってことで」
「じゃあ……お言葉に甘えて。ありがとうございます!」
パッと表情を輝かせてかわうそを見つめる舞花は、「かわちゃんの兄弟ができた」と嬉しそう。
間近で舞花の笑顔を向けられているかわうそが羨ましいなどと無意識に思っている自分は、知らぬ間にずぶずぶと彼女にはまっていっているのだろう。
その場所を代われ。そんな馬鹿なことを思っていた。