君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
6、優しく穏やかな新婚生活
九月も下旬になると暑さも大分和らいでくる。
日によってはまだまだ半袖で過ごす日もあるけれど、真夏の日を思い返すと圧倒的に過ごしやすい時期に入った。
公宏さんと動物園デートをしたあの日。
なんの予告もなく、気後れしてしまうようなハイグレードマンションに連れていかれた。
その先でここに一緒に住もうと言われ、すぐに婚姻届を出しに行こうと言われた。
まさか──辛い記憶に侵食された私は、そんな思いばかりが強かった。
だけど、私の辛い記憶ごと包み込むように、公宏さんはその後日、本当に婚姻届を持って私の実家に現れた。
母にもう一度挨拶をし、そのまま提出しに行ったのだ。
『すぐにでも婚姻届を出して、夫婦になろう』
その言葉に噓偽りがないと証明するように──。
「ただいまー」
日曜のお昼十二時過ぎ。
ひとり実家を訪れると、リビングのソファで母が珍しく横になっていた。
私が入ってくるとゆっくり体を起こす。