君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「ひとりで大丈夫?」
「うん……前で、少し話して戻ってくるから」
「わかった。気をつけてね」
朱里に見送られ、足早にさっき智志くんに話しかけられた駐車場へと向かう。
智志くんはバスの影に隠れるようにして待っていた。
「舞花」
どうしてこんな普通の顔をして私の前に現れることができるのだろう。
忘れ始めていた辛く悲しい記憶が蘇り始め、胸の辺りがずんと重苦しく、すでに呼吸がしずらい感じがする。
「押しかけてごめん。でも、連絡もつかないし、お母さんのところに行っても取り合ってもらえなくて、舞花の職場を尋ねるしかなかったんだ」
〝お母さん〟なんて、よく言える。
そう心の中で毒づき、じっと智志くんの顔を見続ける。
連絡なんか取るつもりなんてなく、あの後全て彼の情報は消し去った。
そうさせたのは智志くんだし、それを望んだのだって彼だ。それなのに、何を今更……。
「やっぱり、舞花じゃないとダメだって気がついた」
智志くんから出てきた言葉に、あの日のショックが完全に蘇る。
悲しみ、怒り、拒絶、軽蔑、嫌悪──様々な感情が渦巻いていく。