君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
Side Kimihiro
「久世先生、お疲れ様でした。お先です」
外来診療が終わった昼十二時過ぎ。
診察室で今日診た患者の電子カルテを読み返していたところに、昼食に上がっていく看護師たちが声をかけていく。
それに「お疲れ」と返しながら、カルテの画面を閉じた。
さて、と……。何食うかな。
午後はオペを担当した患者の経過観察と、カンファレンスが入っている。
「あ、おい、久世」
脳外科外来を出て医局に向かっていく途中、後方から名指しで呼び止められた。
振り返った先に近づいてきたのは、同期で救急医の曽我達樹。
ここ、帝慶医科大学病院の高度救命救急センターに在籍している。
俺自身も救命救急センターには脳外科分野で所属していて、曽我と共に仕事をすることは少なくない。
「お疲れ」
「ちょうどいいところにいた。お前に訊こうと思って」
これから搬送患者でも診るのか、曽我はどこか忙しそうな口調で駆け寄ってくる。
「どうした」
「いや、少し前に搬送されてきた患者、お前と同じ久世っていう苗字の女性だったから。まさかお前の奥さんだったりしてってチラッと思っただけ」
「え?」
「なんか、保育園? 幼稚園の先生みたいだな。仕事中に倒れたとかって──」