君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
そこまで聞いて自然とその場を駆けだしていた。
背後から「おい、久世」と曽我が咄嗟に呼び止めたような声が聞こえたものの、足を止めている場合ではない。
これまで、久世という苗字の人間に多く会ったことはない。
この周辺で久世という苗字の上、幼稚園の教諭。舞花である確率は極めて高い。
これでもし舞花でなければ、それはそれでいいことだ。
救急搬送された患者が入る救急センターに飛び込むようにして入り、搬送されてきた患者を見て歩く。
その中に、点滴に繋がれベッドに横になる舞花の姿があった。
「舞花」
仕事中に倒れ搬送されたとさっき曽我が言っていた通り、舞花はキャラクターのエプロンを身につけ、朝は下ろしていた長い髪を左右に分け三つ編みに結っている。
転倒した際のケガなのか、左の頬にガーゼが宛てられ手当てが施されていた。
一体どういう状況で搬送されたのか、誰か人を捕まえて訊こうと振り返ったとき、救急担当の看護師が「久世先生」と声をかけてきた。