君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
仕舞われていたものが溢れ出していくように、次々と脳裏を埋め尽くしていく。
喉を押さえ付けられ、耳元を嬲った総毛立つ舌の感触。
必死で振り回した腕は簡単に捕まり、引きちぎるようにしてシャツのボタンが弾け飛んだ。
「嫌っ──」
丁寧な手つきでトレーナーの裾から素肌に触れてきた彼の手を、気がつくと拒否するように引き剥がしていた。
驚いたようにわずかに大きく開かれるアーモンド形の瞳。
無意識の自分の行動にハッとしたけれど、それでも体の震えが止まらない。
「舞花……?」
怖くなんてない。
頭ではそうわかっているはずなのに、どうして……?
消えてなくなっていた、心に深く刻まれた辛い記憶。
その古傷に囚われたまま、私は大事にしてくれる彼の手も拒絶していた。