君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「もしかして、先生の……」
「ああ、妻だ」
「そうだったんですね。脳外で受診歴もあったので、今お呼びしようかと思っていたところでした」
「状態は」
「はい。付き添われてきた方の話では、突然転倒されたとのことですが──」
付き添い……?
「今は落ち着いています」
「付き添いというのは」
「ああ、外でお待ちですけど」
恐らく同じ園の職員だろう。突然の転倒とは、そのときの状況を詳しく訊く必要がある。
救急の待合いにひとり向かうと、そこにはスーツ姿の男性がひとり落ち着かない様子でうろうろとしていた。その他に人の気配はない。
付き添いとはこの男なのだろうか。でも、幼稚園で勤めているようには見えない。
普通の会社員のような雰囲気だ。
現れた俺の姿を見て、男は「あの、舞花、都築舞花は」と言う。
下の名前を呼び、旧姓のフルネームで言い直したことに違和感しか感じない。
鼓動が不穏な音を立てて鳴り始める。