君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「寒い……」
陽が落ちると空気は一層冷え込む。
今日は時折北風も吹いてきて、皮膚が晒されている部分はすごく冷たい。
「舞花」
公宏さんに呼びかけられ、少し緊張しながら顔を上げる。
記憶が戻ってからというもの、目を合わせるのにも多少の緊張を強いられるのが自分でも苦痛でならない。
「無理そうならいいけど、手、繋いでみないかなと思って」
私側の手をコートのポケットから出し差し伸べた公宏さんは、「クリスマスだし」と微笑を見せる。
繋ぎたいという気持ちの反面、よからぬ展開が頭をよぎる。
こんなところで突然気分でも悪くなってしまったら、公宏さんに迷惑をかける。
せっかくのクリスマスデートが台無しになってしまう。
「ごめん。急に言われても困るよな」
あれこれ考えているうちに、公宏さんは差し出していた手をポケットに戻していた。
何事もなかったようにイルミネーションの光に目を向ける横顔を見て、胸がズキズキと疼き始める。
大好きな人にこんな顔をさせてしまっている自分が許せないし情けないと思うと、自然と「公宏さん」と声をかけていた。