君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「あの……」
黒いコートから出る、すっかり冷えた指先を差し出す。
公宏さんは私の手と顔を交互に目にし、「どうした?」と確認するように言った。
「手……繋いでください」
私からの申し出に、今度は公宏さんが弱ったような笑みを浮かべる。
「ごめん……気にさせたな。無理しなくて──」
「無理じゃないんです。私も……本当は繋いで歩きたいから。だけど……もし、自分がおかしくなったりしたらって、そう思うと躊躇しちゃって……」
素直な気持ちを口にしてみる。
公宏さんは黙って私の手を取った。
「そんなことだったら心配ない。俺を誰だと思ってるんだ? 舞花の旦那で、舞花の主治医だぞ?」
公宏さんはフッと笑って私の手をしっかりと握ってくれる。
その頼もしく心強い手に、鼓動がトクトクと音を立て始めた。
こうして手を繋ぐのも、いつぶりだろう。