君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
記憶が戻ってからというもの、公宏さんは私を気遣いこれまでのように触れてはこなくなった。
こうして手を繋ぐことはもちろん、キスも、それ以上のスキンシップも今はない。
触れることもできない妻なんて、男性にとっては苦痛に違いない。
「大丈夫、みたいです。昔は、絶対無理だったのに……」
男性と話したり、至近距離に近づかれただけでも動悸がするほどだった私は、触れたり手を繋ぐなんてことはもってのほか。
だけど、今は大丈夫のようだ。
「記憶を失っている間に、舞花の環境も変わったから、昔と全く一緒というわけでもないと思う」
「え、それは……?」
「結婚して俺の奥さんになって、愛し合った記憶だって舞花の中にちゃんとあるわけだから。男に対する恐怖心がそこに蘇ってきても、この人は特別っていう想いがあれば、それは昔の舞花とは違うだろ?」
「それじゃあ、今までみたいに怯えることも、もしかしたらなくなってくることも……?」
「そうなっていけばいいなって、俺は思ってる」
確信はないし、断言できるものでもきっとない。
だけど公宏さんの言う通り、私も昔の私ではない。
心から愛しいと思える人に出会い、愛し愛された時間が確かに存在している。