君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「公宏さん、ここにはなぜ?」
「結婚指輪、まだ見にもこれてなかったと思って」
「あっ、そうですね。すっかり忘れてました」
「忘れるなよ。むしろ急かすくらいじゃないと」
「えっ、急かすって」
久しぶりにそんなふざけた調子のやり取りを交わすものの、場所が場所だけに落ち着かない。
ふたつのリングがセットで並ぶマリッジリングのショーケースに近づいて、「公宏さん」と彼を見上げる。
公宏さんは私が小さな声でも話せるように背を屈めてくれた。
「でも、こんなすごいところ入ったことないですし、本当にここで……?」
「舞花が気に入らないなら他でもいいけど。何か希望があれば」
さらりと気に入らないならと返ってきて、慌てて横に首を振る。
「気に入らないとかじゃないです! 身の丈といいますか、なんというか……」
結構真剣に言ってみたものの、公宏さんはなぜだかフッと笑う。
「身の丈って、そんなことだったら気にしなくていいと思うけど」
そう言って「どういうのが好き?」と手を引きショーケースを覗き込んだ。