君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


「公宏さん。いつも、ありがとうございます」


 唐突にお礼を口にしてしまい、自分でもハッとする。

 公宏さんはクスッと笑って「なんだよ、急に改まって」と言った。


「私、こんななのに……変わらずそばにいてくれて。なんか、すごく幸せ者だなって」


 記憶を取り戻してから、私たち夫婦の距離間は確実に変化してしまった。

 それでも、公宏さんは変わらない。

 それが嬉しくもあり、時に辛くも思える。

 私ばかり幸せをもらってしまっていて、私は彼を少しでも幸せにできているのだろうか、と……。

 そんな想いが募ると、トラウマに囚われたままの自分を憎くも感じていた。


「それを言うなら、俺のほうこそだ」


 静かな部屋の中、公宏さんの声が耳に届く。

 目を向けるとその視線はずっと遠くを見つめていて、鼻筋の通った綺麗な横顔に釘付けにされた。


「舞花と一緒になって、知らなかった幸せをたくさん味わってる。俺、幸せだなって感じることが、毎日ある」


 公宏さんの言葉に思わず視界が歪む。

 慌てて目尻に指を置いた私をちらりと見て、公宏さんは「なんで泣きそうになるんだよ」と微笑した。

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