君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「だって……私、そんなこと言ってもらえるなんて、思ってもなかったので」
声を詰まらせる私を、公宏さんは「馬鹿だな」と弱ったように笑う。
そして、前髪の上を遠慮がちに軽く撫でた。
「一緒にいるだけで、それだけで幸せなんだよ」
今の自分に引け目を感じているからこそ、それはもらって一番嬉しい言葉だった。
公宏さんはそういうこともわかっていて、こんな言葉をかけてくれたのかもしれない。
「だから、俺のほうこそこれからもそばにいてほしい」
「公宏さん……」
自然とお互いに見つめ合い、公宏さんの手が伸びてくる。
でも、公宏さんは「ああ、だめだ」と自制するように言い、私へたどり着く前に手を引っ込めた。
「どうしても、そばにいると触れたくなるな」
自嘲気味に笑って、公宏さんは私の前から立ち去っていく。
「先に寝ててくれ。まだもう少し仕事があるから」
離れていく背中を目にしながら、胸がきつく締め付けられる。
忘れてしまっていた私なら、きっと今彼の腕の中にいたのだろうと思うと、元に戻った自分が恨めしかった。