君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


 幼稚園で倒れ救急搬送されたことは、母ももちろん知っている。

 あの後、記憶が戻り全て思い出したことを知ると、母は責任を感じたように自分を責めた。

 智志くんは幼稚園に来る前、私に会いたいと母のところを訪れていた。

 会わせるわけがないと、もう娘に関わるのはやめてほしいとほとんど門前払いしたという。

 その結果、幼稚園にまで押しかけ私に迫るという事態を招いてしまった。

 それは自分の責任だと母は言ったのだ。

 もっと、絶対に舞花の前に姿を現さないように釘を刺すべきだった、と……。

 でも、それは母のせいなんかではない。

 こうなることは、失っていた記憶は、きっと戻る運命だったのだ。


「でも、公宏さんには申し訳なくて。夫婦なのに、ビクビクしてる自分が嫌かな……」


 今の気持ちを素直に吐露すると、母からは言葉が返ってこなくなる。

 暗い話をするつもりは一切なかったため、話を切り替えるように「あ、でも」と声のトーンを上げた。

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