君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


「昔は、そんな前向きなこと言わない子だったから。本当に、乗り越えていけるんじゃないかって思えて」


 そう言われて心に浮かんだのは、昨晩の公宏さんの優しい顔だった。

 そばにいてほしいと言ってくれた声まで鮮明に耳の奥に蘇る。

 公宏さんのことを想うと、自然と胸が温かくなった。


「私が変わったとするなら、それは公宏さんのおかげだよ。彼と一緒にいて、きっと強くなれたんだって思うから」

「舞花……」


 手を止め、母はふいっと顔を背ける。

 目元を押さえているのがわかって、気づかないふりをするように手元の洗い物を再開した。


「じゃあ私も、もっともっと長生きしないとね! 孫を抱くために」


 明るく弾んだ声に目を向ける。

 にっこりと微笑んだ母と目が合って、ほんの少しだけ、やっと親孝行ができたような気がしていた。


「そうだよ! 長生きしてもらわないと困るんだからね」

「ほんとね。よし! お店も、もっともっと頑張らないと。あ、舞花、裏口に吊るしてる玉ねぎ、取ってきてくれる?」

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