君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
流し場での洗い物がちょうど終わったとき、奥の裏口の外にネットに入れて吊るしてある玉ねぎを取ってほしいと頼まれた。
「玉ねぎね。何個取る? 袋ごと?」
珠暖簾をくぐって奥の通路から裏口の扉を開ける。
母からの返事を待ちながら玉ねぎのネットに手をかけたとき、ガタンとただならぬ音が厨房から聞こえた。
「お母さん──⁉︎」
慌てて戻った厨房の中、母が細い通路に横たわっていた。頭を押さえ、突然目の前で嘔吐する。
目にした光景に、一瞬何が起こっているのか頭の中が真っ白になる。
「お母さん……? ねぇ、お母さんっ!」
母の頭のすぐそばに膝をつき、両手で揺さぶるようにして肩を押す。
しかし、反応はない。
「救急車……救急車を──」
パニック状態で自分のバッグからスマートフォンを取り出し、一一九番へコールをした。