君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~

Side Kimihiro



 不安に押し潰されそうな舞花を前にして『大丈夫だ』とは言ってやれなかった。

 それが無責任な言葉となる光景を、これまで見たことがあったからだ。

 医者は神様ではない。

 それはどんなに優れた医師にでも言えることだ。

 搬送時の状況からみて、脳出血は間違いないだろうと思っていた。

 頭部CT撮影とMRIの検査結果、やはりくも膜下腔の出血が見られた。

 緊急オペの準備に入りながら、幸い第一関門は突破だと安堵する。

 最悪、オペも出来ない手の施しようのない場合もあるからだ。


「公宏さんっ、お母さんは」


 落ち着いて待つように俺から言われていた舞花は、椅子にも掛けず通路の真ん中をうろうろと歩き回っていた。

 脳疾患と思われる患者の搬送があると救急から連絡が入ったときは、六十代、女性という情報しかなく、救急車から舞花が降りてくるまでそこに横たわるのが聡子さんとは知らなかった。

 舞花の顔を見て、一瞬動揺したのは隠しきれなかったと思う。

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