君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
舞花は手術見学室からオペを見守ることを強く希望した。
麻酔科医によって全身麻酔がかけられ、いよいよオペが始まる。
身支度を済ませフットスイッチでオペ室の自動ドアを開くと、オペに携わるスタッフから口々に「お願いします」と声が上がった。
「破裂脳動脈瘤に対する開頭クリッピング術を始める。よろしくお願いします」
ちらりと一瞬手術見学室に繋がる窓に目を向けると、舞花が祈るように両手を胸の前に組みこちらを見つめていた。
聡子さん、頑張ってくれ──。
サージカルドレープがかけられた目の前の聡子さんに心の中で力強く呼びかけた。
外科的開頭を行い、顕微鏡を覗く。
くも膜を切開すると血腫が充満し、べっとりと周囲の組織が見えないほど張り付いていた。
洗浄液で血腫を洗い流し、慎重にくも膜の下に走る脳動脈瘤を確認する。
これと同じような症例は、これまで何例も見てきているし、オペも経験してきている。
しかし、身内である、舞花の母である聡子さんのオペとなるとより一層緊張を強いられる。