君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


 脳内には、少しでも傷つければ後遺症を残すことになるような神経も多く走る。

 僅かでも手術操作が狂えば脳梗塞を起こし、言語障害や麻痺などこれまでと同じ生活を送ることは困難となる。

 聡子さんがあの小料理屋に立つこともできなくなるのは容易に想像がつくことだ。

 オペも成功させて、後遺症も残さない。その最善を尽くす──。

 到達した動脈瘤の根本へ、チタン製のクリップをかけ慎重に挟んでいく。

 脳の圧を下げるため、脳の表面や脳内の出血をできるかぎり取り除いて綺麗にし、脳内を循環している水分を排出させる管を置いた。

 閉創を終えたのは、オペ開始から約二時間半後。

 大きなトラブルもなく無事にオペを終え、聡子さんは集中治療室へと入った。

 オペは成功しても、二週間ほどは厳密に経過観察をしていかなくてはならない。

 脳の周りに回り込んだ血液が脳血管に悪影響をおこし、脳血管が縮んでしまうことがあるのだ。

 重度になると脳に血流が送られなくなり、脳梗塞を引き起こすこともあるため細心の注意が必要となる。

 今後の治療について説明を聞いた舞花は、ガウンや帽子を身につけ集中治療室に入室する用意をした。

 手術を終え横たわる聡子さんをじっと見つめ「ありがとうございました」とマスクの中で静かにお礼を口にする。

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