君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「ずいぶんと楽しそうですね」
母娘の様子に公宏さんは探りを入れる。
「今ね、まだまだ死ねないわねって話してたのよ。孫を抱くまではって。ね、舞花」
「あ、う、うん」
なんてことなさそうに母は話を振ってきたけれど、子どものこととなるとわずかに動揺してしまう。
ちらりと公宏さんを盗み見たけど、過剰反応した私と違って特に変わった様子はなく、「そうでしたか」と微笑んだ。
「聡子さん、ご気分のほうはいかがですか?」
「ええ、大丈夫よ。すごくいいわ」
顔色もよくはっきりとそう答える母の姿に、改めて回復したことに喜びを覚える。
その母を救ってくれた人が目の前にいる自分の旦那様だという事実に、今更ながら密かに鼓動を速めていた。
「来週には、退院の目処がたつんじゃないかと思います」
「そうなのね。そろそろお店も開けないと、常連さんたちが待っててくれてるから」
「ですね。俺を含めてたくさん待ってますよ」
母と話した公宏さんは、「舞花」と私へと目を向ける。
「もう少ししたら上がるけど、一緒に帰るか?」
「そうなんですね。じゃあ、一緒に帰りましょう」
公宏さんの勤務があと少しだと知り、母の病室で時間を潰して待つことにした。