君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「子どもたちが懐いてるの見て、すごいなって。俺が子どもたちに怖がられるほうだから、好かれるコツがあれば教えてもらいたいくらいだなって思って見てた」
「あ、そう、ですか……」
褒めてもらっているのに、素直に喜ぶ反応も、謙遜する言葉もすんなり出てこない。
ただ肩に力が入って、ガチガチに緊張するだけ。
普通ならこういうとき、「ありがとうございます」と笑顔を見せたり、「そんなことないですよ~」とえへへっと照れ笑いをしたりするのだろう。
私にはそういう反応が一切できない。
「これ、忘れ物」
久世先生の足もとに目を落としている視線の中に、かわちゃんが差し出される。
男の人の手に持たれたかわちゃんは、なんだか普段より小さく見えた。
「放射線科の近くの廊下に落ちてるの見かけて拾ったんだけど、預ける前に呼び出されて。預かったままになって申し訳ない」
そんなところで落としてたんだと思いながら、「すみません、ありがとうございます」とかわちゃんを受け取る。
「こちらこそ、お仕事中にご迷惑をおかけして、すみませんでした。では、失礼します」
最後にもう一度深く頭を下げ、来た廊下を足早に去っていった。