君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「久世先生、聞いてくれる?」
出てきたお通しの菜の花の和え物に箸をつけようとしたとき、カウンターの向こうの聡子さんがどこか弾んだ声で話しかけてくる。
「何かいい話ですか?」
「あら、なんでわかるの?」
「声の調子が、何かいいことを話そうとしてるってわかりますよ」
聡子さんはふふっと笑う。
「娘の話なんだけどね。実は、もうすぐ結婚することになったのよ」
「え、聡子さんの娘さんが?」
「久世先生も驚いたでしょ? あの子、私にも内緒でお付き合いしてた人がいたみたいで。しかも、もうすぐ結婚するって」
聡子さんの声がますます弾む。相当嬉しいのだろう。
通い始めて常連と言えるようになった頃、聡子さんのひとり娘の話を聞かせてもらった。
結婚して間もない頃にご主人を事故で亡くした聡子さんは、この店を切り盛りしながら女手一つでひとり娘を育ててきたという。
その娘が高校二年の頃、学校帰りに強姦未遂に遭った。