君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「え……あの、智志くん? 今、そんな冗談言ってる時間じゃ──」
私の声に被せて、智志くんの深いため息が聞こえてくる。
自分の身に起きていることについていけず、頭の中で状況を整理して処理していく機能も失われていく。
ただ、押し寄せてきた不安にドッ、ドッと動悸が激しく全身を包み込む。
『連絡するのが遅くなったことは謝る。だけど、冗談なんか言ってない』
反応する声も出てこない。ただ、瞬きを忘れたまま耳を澄ます。
『この状況でもよくわかってないみたいだから、今からはっきり言うからよく聞いて。舞花とはやっぱり結婚できない。だから式はキャンセルした』
結婚、できない……?
「結婚、できないって、どうして──」
『他に結婚しようと思う相手ができた』
え……?
『その相手の妊娠がわかって、彼女と一緒になろうと思う』
次々と出てくる信じられないフレーズの数々。
今されている話は、私のことなの……?