君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「とにかく、大きなケガがなくて幸いでした。手足の打撲は少し見られるようですが、骨折もなかったし、頭のほうも異常はなかったので」
「ええ……。神様は、さすがにそこまで、意地悪しなかったわね……」
「……?」
意味深な言葉と、どこか遠くを見るような視線に疑問が募る。
ただの患者なら、踏み込まず当たり障りない返答をして話を終わらせる。
しかし、相手はもう何年も前から知るお世話になっている聡子さんだ。
お節介かもしれないと心の片隅で思いながらも「あの」と声をかけていた。
「何か、あったんですか?」
訊いてみても、聡子さんの陰った表情は変わらない。
やはり訊くべきではなかったかと思い始めたとき、「今日……」とぽつりと呟くような声が聞こえた。
「あの子、結婚式だったのよ」
前回お店に食事をしに行ったとき、聡子さんが嬉しそうにそんな話をしてくれたのは記憶に新しい。
男性恐怖症の娘は、きっと一生結婚なんてできないと思う。
その娘に、実は付き合っている相手がいたこと、更には結婚することになったと報告を受けたと、聡子さんはどこか興奮気味に話してくれた。
早く話したいという気持ちがありありと伝わってきたし、自分のこと以上に幸せだということも感じ取れた。
だから話を聞いて素直に良かったと思ったし、祝福の気持ちでいっぱいになった。