君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
外履きに履き替えているところ、向こうから同期の吉田朱里が声をかけてきた。
すまいる幼稚園に同じ年に就職し、五年間切磋琢磨してきた唯一の同期。
他にも同期は二人いたけれど、結婚と転職で先に退職してしまった。
だから朱里は、この幼稚園内での私の貴重な友人だ。
朱里は今年はクラスを持たずフリーの担当。幼少や年少などのまだ手のかかる年代のクラスに臨機応変にヘルプで入る。
「修理に出してたシンバル、今さっき届いたよ。このあと、鼓笛練習だよね? あのシンバル、斗真くんのだった気がして」
「あ、うん、斗真くんの。良かった、練習に間に合ったんだ」
鼓笛隊で使うシンバルのひとつが取っ手が壊れて修理に出していた。
代替品を借りていたけれど、「いつもと違う」と担当になっている私のクラスの園児が練習を拒んでいた。
大人には感じられない些細なことでも、子どもは時に敏感に反応する。
「じゃあ、外遊びみてからそのあと取りに行く」
「私、今空いてるから教室まで運んでおくよ」
「ほんと? 助かる、ありがとう」
そんなやり取りを交わし、園庭に出ていく。
元気いっぱい走り回る子どもたちの中に出ていくと、すぐに「舞花せんせーい」とあちらこちらから声をかけられる。
自分のクラスだけではなく、どの学年の子たちも懐いてくれているのが本当に嬉しい。
子どもたちの声に応えながらさっき呼ばれたブランコへと向かう。
四つ並んだブランコは全部が埋まっていて、みんなルールを守って並んで順番に乗っていた。