君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
出してもらったから揚げ定食を食べ終える頃、母が突然「今から病院に行くわよ」と言い出した。
一体なんの病院に行くのかと訊くと、帝慶医科大学病院の脳外科だと言った。
なぜ脳外科になんかかかるのかと訊いても、とにかく診てもらえることになったからの一点張りで、母はその理由を話してはくれない。
疑問のまま連れていかれた病院は土曜の上夕方近くという時間外で、外来には患者の姿は全くなかった。
「久世先生、こんな時間外にすみません」
「いえ、こんにちは。どうぞ」
二番の診察室から出てきたのは、これで会うのは三度目となる久世先生。
今日は白衣の下はスーツのようで、淡いブルーのシャツに濃紺のネクタイを締めている。
本来なら、大学病院に時間外でかかることなんて難しいこと。
しかし母が病院に連絡をすると、タイミングよく勤務していた久世先生に取り次いでもらえたという。
今さっき聞いて初めて知ったことだけど、かなり昔から母の小料理屋に常連のお客様として久世先生が通っていたという。
確かにこの大学病院から母の小料理屋は圏内だけど、世の中狭いと思ってしまった。