君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


「お母さん……私、特に診てもらうところなんてないよ?」


 診察室に入っていく久世先生に聞こえないように、母に小声で訴える。


「大丈夫よ。少し気になることがあるから、先生に相談しに来ただけだから」


 私自身は特にどこも気になるところなんてないのに、母が私の様子で気になるところがあるということだ。

 それはそれで怖いけれど、診察を受ければその理由がわかるだろうと観念する。

 診察室に入ると、母と私が掛けられるようにふたつ椅子が用意されていた。

「お願いします」と腰を下ろし、パソコン画面に目を向ける久世先生に小さく頭を下げた。


「その後はどうです?」

「その後……はい、特には。変わらず生活してます」


 そう答えると、久世先生は私に目を合わせ「そうですか」と端整な顔に微笑を浮かべる。


「今日はMRIを撮らせてもらおうと思うので、ここを出てこの先にある放射線科に一度行ってきてもらってもいいですか?」

「MRI……わかりました」


 検査票の入ったファイルを手渡され、放射線科にひとり向かう。

 十五分ほどで撮影を終え元の診察室に戻ってくると、母がバッグを手に立っていた。

 先生と話していたようだけど、今にも立ち去る雰囲気だ。

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