君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


「わざわざお店まで送っていただいて、ありがとうございました。ご馳走にまでなってしまって」

「こちらこそ。付き合ってくれてありがとう」

「いえ、そんなこと」


 シートベルトをはずし、ドアを開けて降車する。

 ドアを閉めるとすぐにパワーウィンドウが開いた。


「じゃあ、また何か気になることがあればいつでも」


 そう言われて、ふと、もう病院にかかって久世先生にお世話になることもないのかもしれないと思う。


「あの」

「……?」

「今日……短い時間でしたけど、すごく楽しかったです。ありがとうございました」


 ありきたりだけど、今の素直な気持ちを伝え、ぺこりと頭を下げる。

 私にとって日常にはない新鮮な時間だった。


「お仕事、頑張ってください。では」

「あ、ちょっと待って」


 お店の暖簾に体を向けかけたとき、久世先生の声に呼び止められる。

 振り返り暗い車内に目を向けると、久世先生がじっとこっちを見ていた。


「いや……ごめん、なんでもない。都築さんも、仕事頑張って」

「はい」

「聡子さんにも、よろしくと。じゃあ」


 もう一度頭を下げると、窓が閉まりゆっくりと車が発車する。

 去っていく車を見届け、暖簾をくぐった。

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