君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「で、診察のほうはどうだったの?」
「うん……MRIでみた感じは異常ないって言ってたよ。ただ、今日一緒に食事して私の様子みて、一部失ってる記憶はあるだろうって」
久世先生に言われたことをそのまま話すと、母は表情をふっと無にして「そう」と言う。
「でも、今何も問題なく生活できているなら、大丈夫だって。忘れてしまってもいい記憶もあるとかって言われて……」
「久世先生、そんなことを?」
「うん」
「そう……」
やはり、私の知らない何かをふたりが話していることを察する。
忘れてしまってもいい記憶──それって、一体……。
「お母さん、それって──」
訊きかけたそのとき、私を見ていた母が突然額を押さえる。
調理台に手をついてよろけた体を支えた姿に「大丈夫!?」と咄嗟に声をかけた。
「ああ、ごめん……大丈夫よ。ちょっとくらっときただけ」