君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
「あら、落合先生と久世先生が揃って! いらっしゃい」
お店の暖簾をくぐると、今日も聡子さんが変わらず出迎えてくれる。
お店には先客が二組テーブル席にいた。
「学会があってね、久しぶりに一緒に行ってみようって話になったんだ」
「そうだったんですね。お疲れ様です。どうぞ、カウンター席」
声の調子は元気そうに聞こえるし、表情も穏やか。
救急搬送があったあの日から、早くももう二か月。
少しは気持ちも落ち着いたのだろうか……?
「ゆっくりしていってくださいね」
お通しを出しビール瓶とグラスを置いた聡子さんは、早速注文された料理にとりかかる。
テーブル席の客の追加注文を受けたり、ひとり忙しそうにしているのを前に、落合先生と今日のシンポジウムについて意見交換を交わした。
来店してから一時間近くが経つ頃には、先客の二組も店を出、店内の客は落合先生と俺だけとなった。
「聡子さんも休憩したらどうだ」
お店がひと段落した雰囲気をみて、落合先生が自分が入れている焼酎の瓶を手に取り持ち上げる。
お店に他の客がいなくなったとき、聡子さんはごくまれに落合先生に勧められて一杯ご馳走になることがあるのだ。