君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
どのぐらいの時間があれば、彼女が負った心の傷は癒えるのだろうか。
どれだけの時間があっても、もしかしたら完全には消えないかもしれない。
そんなことを忘れてしまうような、大きな幸福が彼女を包み込まないかぎり……。
「聡子さん、これは私からひとつ提案なんだがね。久世と娘さんなんてどうだろうかと思ったんだ。結婚を前提に」
聡子さんが「え?」と言ったタイミングで、俺のほうもホッケを突いていた手が止められる。
となりの落合先生に目を向けると、至って真面目な面持ちでカウンターの向こうの聡子さんを見つめていた。
「え、久世先生と、うちの子……?」
そうなの?というような聡子さんの視線を受け、落合先生に再び目を向ける。
落合先生は頷きにこりと目尻に皺を寄せた。
さっきお店に来る前、いい相手はいないのかと訊いたのはそういう話をしようとしていたから確かめられたのだと気づく。
「落合先生、うちの子に久世先生みたいな素敵な人、釣り合わないわ。お医者様でこんなにイケメンなのに。ねぇ、久世先生? 素敵なお相手がいるはずだから──」
「それは、いないですし、釣り合わないなんてそんなことは全くないです」
なんて返答をしようか考える前に、口からきっぱりと否定の言葉が出てきていた。