姫と魔王の城
辿り着いた平穏
「ここは…島…?」

光に包まれて城と共にたどり着いたのは、花や緑が豊かな美しい島だった。

「人間たちのいるところからだいぶ離れた場所だ…ここならば人間も来られまい。」

「きれい…ここが新しい居場所……」

「魔王さまぁ!姫〜!!」

二人のそばに駆けて来たのは小鬼だった。

「何があったの!?おいらたち、なんで…」

「ミグー!」

娘は小鬼を優しく抱きしめた。

「魔王さまと相談をして、引っ越しをすることにしたのよ。…人間と、仲良くできる日が来るまで、人間たちと離れて暮らすの……」

「ひっこし…?ひどい人間…いない…??戦争…しなくて…仲間も…痛い思い…しなくて……」

小鬼の目からはまた、涙が溢れた。娘は小鬼を抱きしめたまま優しく言った。

「もう大丈夫…!大丈夫なの…みんなと仲良く暮らせるの…!…いつか人間たちと仲良く生きていけるようにしましょう…?」

小鬼は娘の腕の中で大きな声で泣いた。

「よかったあああ!!魔王さまも、おいらも、みんなも、痛い思いしないんだ!!いるだけで叩かれたりしないんだぁ…!!」

「ミグー…」

「姫もっ…ぐすっ…ずっといてくれるんだ…!!魔王さまあ!姫、ごーもんされなくていいでしょう!?痛くしなくていいんでしょう!?」

泣いてすがる小鬼に、魔王は困ったように笑って言った。

「本当に、よく懐いている…。ミグー、そんなに『姫』が好きなのだな…。」

娘ははっと気づき、顔色を変えた。

「ミグーを怒らないであげて下さい!私が悪いんです…!」

魔王は娘をみつめた。

「何故そのようなことを?よく、人間嫌いだったミグーが懐いたものだ、人間にあれだけ怯えていたミグーが…。あの状況では部下が足りず、気の毒だがこやつにも、人質を見張らせるほかなかったのだ…お前のおかげだ…」

「あ……」

魔王は優しく娘の頬を撫で、小鬼の頭を撫でた。そして、小鬼に言った。

「『姫』は私も興味がある。なのでお前の世話係として置くことになった。そう、お前の言う通り、ずっと一緒だ。」

「姫…!!」

「…魔王…さま……」

「ではそろそろ皆に、ここで生活する事を説明せねばな。」

魔王はその後、城から出てきた魔物を率いて会議や整備指導を始めた。
小鬼や娘は料理長と共に食事を用意し、娘は少しずつ他の魔物たちにも打ち解けていった。
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