姫と魔王の城
優しき娘
姫は牢の中で身を固くしていた。
(私…魔王に身体を……。こんなのが続くのかな…。…私は本物の姫じゃない…。城にいきなり連れてこられて、無理やり姫様の影武者にされた…ただの貧民の子…。魔王に姫様の代わりに捕まって、戦争に持ち込むための時間を稼ぐためだけに…。もしバレたらそのまま殺されてしまう…誰も助けには来ない…私の命は…使い捨て…。)
小鬼はまた姫に近付いた。
「ほんとにおとなしいな…話に聞いていたのと違う…よく見てみるか……」
「あ、あなた……」
おとなしかった姫に突然声を掛けられ、小鬼はたじろいだ。
「っ…なんだよ!?おいらはミグーだ!」
「ミグー…?それが名前…?」
「また余計なこと言っちゃった……わ、悪いかリーシャ姫!」
名前を呼ばれた娘は一瞬、自分が呼ばれたことに気づかなかった。
「…え……?え…あ、なに…??」
「…ぼんやりしてるなあ…魔王さまの『ごーもん』が効いてるのかな?…それで…なんだよ!?」
娘は小鬼の腕にあった深い傷に気付いた。
「あ…手、痛いの…?怪我をしてるみたい…」
「それが、どうしたんだよ!?こんなのおいら痛くない!」
「でも傷、深そう…」
小鬼は強がって返した。
「痛くなんかない!貧弱な人間と一緒にするな!」
「でも…」
「やさしいふりしたって、出してなんかやらないぞ!」
「わかってる、でも見せて、お願い…!」
娘の勢いに押され、小鬼は恐る恐る、牢の中にいる娘に向かって腕を差し出した。
「ん…んっ!」
「ありがとう…。ちょっと…水で洗いたいな…」
娘はそばにあった、飲み水らしい水を少しすくい、小鬼の腕にかけて自分の着ている粗末なドレスの裾で、檻の戸の隙間からそっと拭いた。
「あ、痛っ!何するんだよ!」
「傷口を洗ったの…。もう一度腕を出して…痛くしないから…」
「あ…」
「ハンカチを隠して持っててよかったわ…はい、しばらくしばっておいて…?」
「…あ…ありがと…」
娘は怖いのも忘れ、小鬼に話しかけた。
「ミグー…あなたは強い子ね…人間だったら、痛くて動かせないかもしれないほどの傷だったのに…。」
「ば、バカにするな!おいらだって魔物の子だ!」
「ふふっ」
娘は少しだけ、楽しそうに笑った。
(私…魔王に身体を……。こんなのが続くのかな…。…私は本物の姫じゃない…。城にいきなり連れてこられて、無理やり姫様の影武者にされた…ただの貧民の子…。魔王に姫様の代わりに捕まって、戦争に持ち込むための時間を稼ぐためだけに…。もしバレたらそのまま殺されてしまう…誰も助けには来ない…私の命は…使い捨て…。)
小鬼はまた姫に近付いた。
「ほんとにおとなしいな…話に聞いていたのと違う…よく見てみるか……」
「あ、あなた……」
おとなしかった姫に突然声を掛けられ、小鬼はたじろいだ。
「っ…なんだよ!?おいらはミグーだ!」
「ミグー…?それが名前…?」
「また余計なこと言っちゃった……わ、悪いかリーシャ姫!」
名前を呼ばれた娘は一瞬、自分が呼ばれたことに気づかなかった。
「…え……?え…あ、なに…??」
「…ぼんやりしてるなあ…魔王さまの『ごーもん』が効いてるのかな?…それで…なんだよ!?」
娘は小鬼の腕にあった深い傷に気付いた。
「あ…手、痛いの…?怪我をしてるみたい…」
「それが、どうしたんだよ!?こんなのおいら痛くない!」
「でも傷、深そう…」
小鬼は強がって返した。
「痛くなんかない!貧弱な人間と一緒にするな!」
「でも…」
「やさしいふりしたって、出してなんかやらないぞ!」
「わかってる、でも見せて、お願い…!」
娘の勢いに押され、小鬼は恐る恐る、牢の中にいる娘に向かって腕を差し出した。
「ん…んっ!」
「ありがとう…。ちょっと…水で洗いたいな…」
娘はそばにあった、飲み水らしい水を少しすくい、小鬼の腕にかけて自分の着ている粗末なドレスの裾で、檻の戸の隙間からそっと拭いた。
「あ、痛っ!何するんだよ!」
「傷口を洗ったの…。もう一度腕を出して…痛くしないから…」
「あ…」
「ハンカチを隠して持っててよかったわ…はい、しばらくしばっておいて…?」
「…あ…ありがと…」
娘は怖いのも忘れ、小鬼に話しかけた。
「ミグー…あなたは強い子ね…人間だったら、痛くて動かせないかもしれないほどの傷だったのに…。」
「ば、バカにするな!おいらだって魔物の子だ!」
「ふふっ」
娘は少しだけ、楽しそうに笑った。