姫と魔王の城
娘の愛と魔王の想い
魔王が娘を置いていなくなると、小鬼は娘のいる牢に駆け寄った。

「大丈夫か?姫…」

「…ミグー…心配…してくれたの…?」

娘はまだ辛そうに身体を横たえたまま小鬼を見やった。

「人間は嫌いだ…!姫は人間だけど…でも…」

娘は不器用にも気遣ってくれる小鬼に向かって、心配しないようそっと微笑んだ。

「ありがとう…私は大丈夫…。それよりミグー…昼間よ…?魔物だって…少しだけでも…眠るんじゃなかった…?」

「平気だ…!…でも…姫が…眠る…なら…」

小鬼は安心したのかそのまま座り込み、寝息をたて始めた。

「ありがとう、ミグー…」

娘もゆっくりと眠りに落ちていった。


それから数日、娘は牢の中で小鬼と他愛もない会話をし、人間向けの味付けの素朴な食事をし、魔王に無理やり身体を重ねられ続けた。
小鬼はすっかり娘に懐き、牢の中に娘がいる間は話し相手になっていた。娘は小鬼が時々牢の前からいなくなると、とたんに寂しさと悲しさが襲ってきた。

(愛する人に抱き締められることも叶わずに、私はきっと死んでいくの…。)


あるとき、小鬼は娘に言った。

「姫…魔王さまが嫌いか…?」

「え…嫌い…??」

「そうだよな…さらわれてきたしな…魔王さまはまりょくのために、姫に痛くしてるし…」

小鬼は独り言を言い、うなだれるようにしながらまた呟いた。

「…何の願い叶えるために急いでるんだろ…?本当は優しい魔王さまなのに…」

「え……」

小鬼は「しまった!」というように口を押さえた。

「なんでもない!なんでもないんだ!」

小鬼は笑ってごまかしたが、娘は小鬼の言った言葉が忘れられなかった。

(願い…魔王が…?その願いのために姫様は…。それも、ミグーが優しいというくらいの魔王が変わるほど…)
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