姫と魔王の城
次の日も魔王に呼び出された娘は、姫の振りを続けながら意を決して聞いた。

「あなたはなぜ、魔力を欲するの!?」

「…人間どもには関係のないことだ…!」

「わたくしを…壊してでも魔力がいるのの!?何のために!?」

「…黙れ…!!人間…風情が……!!!」

魔王の怒りの声が響き渡り、赤い瞳がいきなり強さを増してギラリと光ると、魔王の周りを、ゴウッという強い音を立てて風が吹き始めた。部屋中が風で吹き荒れ始めたその直後、

「姫~~!!!」

突然、部屋のすぐ外から叫び声が聞こえた。

魔王が気付き扉を開くと、小鬼が泣きながら走り去っていくのが見えた。

「ミグー…」

魔王は娘に向き直ると、魔王の瞳が一瞬黒くなり、娘は眠りに誘われた。娘は抗いながら言った。

「あなたは…好きでも無い人と…身体を重ねなければ…ならないほど…大切な…願い…が……」

言い終わるか終わらないかの内に眠りに落ちた娘を、魔王は抱き抱えた。

「ミグーを気に掛けてのことか…これほどまで相手を思える娘だとは…。ミグーが懐くわけだ…あんなに人間に怯えていたミグーが……」


牢の前まで来ると、泣き疲れて眠る小鬼の姿があった。

「まるで話に聞く『人間の子供』のようだな…そんなにこの姫が大切か…。」

魔王は小鬼の頭をそっと撫でると、娘を寝床に寝かせて足枷を繋ぎ直し、小鬼をそばに寝かせて地下牢を出ていった。


「ん…姫……」

小鬼は目が覚めると、牢の中の娘の隣に眠っていたのに気付いた。

「え…なんでおいら……魔王さまが姫に何か怒ってるの聞いて…悲しくなって…」

小鬼がよく見ると、自分は牢の中にいて鍵が開いていた。

「あぁぁぁ!!カギ…カギは!?開いてる!でもおいら、走って牢の前まで来て…何も覚えてない!!どうしよう、なんで中にいるかわかんないけど、おいらがきっと失くしたんだ!!」

娘は目を覚ますと、自分のそばで泣いている小鬼に気づいた。

「…ミグー…もう泣かないで……あれ…?何で中に…」

「姫、カギがないんだ!おいら魔王さまに謝ってこなきゃ!!」

小鬼は駆け出した。
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