姫と魔王の城
絶望と悲しみ
「言わぬか…!私にお前の内の魔力を捧げよ!!」

「あ、あぁぁ!!」

娘はまた今宵も魔王に抱かれた。

「お前を壊すまで犯してやろう…!私はお前が言うまで、止めはしない…!!」

(本物の姫じゃないなんて知られたら…私、魔王とはもう……)
「…い、言わ…な…い…」

身体を揺さぶられたまま呟く娘を見て、魔王は動くのをやめ、辛そうに目を閉じてから言った。

「ならばもっと…!」

「…。」
(何のための魔力かはわからない…でも私じゃ、魔王に魔力を渡すことは……)

娘はなぜこうまで悲しくなるのかわからなかった。しかし、強くつむった目から、涙が一筋流れた。

「…なぜ…こうまでされても言わぬ…?私にお前の魔力が宿りさえすれば…お前を解放してやれるのに…やはり……」

「…解…放…?」
(やっぱり、私を痛め付ける気までは……。魔王には何か大切な理由が……)
「あ……」

 魔王はいつのまにか、黙って娘を抱き締め、繋がったまま動かなくなった。

(ミグーの言うとおり、本当は優しい方なのね……私…きっと魔王が好きなんだわ…。この方がこうするのもただ、願いのために仕方なくで…。この方からしたら、役に立たない私なんか要らないのに……)


それから少し経って、

「魔王様!!探していた、姫に似た娘をやっと見つけ、連れてまいりました!!」

扉の外から声がする。

魔王はハッと気付き、娘と自らを光に包んで身を整えると、ゆっくりと扉を開いた。

「離すのよ!無礼者!!穢らわしい…!」

魔物に連れられ、高貴な身なりで叫びながら周りを睨み付ける娘は、魔王の部屋にいる娘とまさに瓜二つだった。

「…お前が…」

魔王が呟くと同時に、その高貴な身なりの娘は魔王のそばにいた娘を見つけ、凄い形相で睨み付けて言った。

「この役立たず!!お前のおかげですべて失敗よ!魔王にお前を差し出して時間さえ稼げれば済むだけだったのに!!貧民の癖に、振りをして時間を稼ぐこともできないの!?」
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