悪魔と願いの代償
町外れの寂れた屋敷の前に佇む、一人の年頃の娘。
ここは悪魔が棲むと言われ、今はもう近づく者はいない屋敷だ。
辺りは暗く、月明かりだけが照らしている。
「また人間か…俺見たさに肝試しにでもきたか?脅し、逃げ帰るのは見飽きた。」
衣服もすべて黒で統一され、肌は文字通り、血が通っていないように真白。細身の男が、霧のようにどこからともなく現れた。
「あ、悪魔…さん……?」
娘は怯えたように小さく掠れた声で問いかける。顔色は悪く、足は震え、今にも倒れそうだった。
「俺を『さん』付けする人間は珍しい。…何しに来た?」
「あ、あの…お願いがあって来ました……」
「願いか…貧民の娘だな。金か?美貌か?」
少し呆れたように男は言う。すると娘は首をそっと振って言った。
「いいえ…悪魔であるあなたなら、私の願いを聞いてくれるかと……私を少し、生き延びさせてほしいのです……」
「は??」
「私は病気で、長く生きられないと言われているんです…半年持つかどうか、と…。でも私にはどうしても、まだしなければならないことがあって…だから、どうか……!」
娘は必死に頼んだ。しかし悪魔と呼ばれる男はバカにしたように娘に言った。
「悪魔なら出来るだろうとわざわざきたのか。お前もどうせ、自分の為だろう。」
「それは……」
「バカな人間だ、悪魔に頼み事をするなんてな…ま、願いは一つだけだ。代償はもらうぞ?」
言い淀んだ娘を気にする事なく、悪魔は楽しそうに考えを巡らせている。
「そうだな…どうせお前に生気を与えてやるんだからな…」
悪魔は娘のすぐ目の前にいる。にやりと笑うと、すぐさま真顔になり、何でもないことのように娘の顎に手をやり、娘の唇と自分の唇を重ねた。
「っ…!!」
娘は気づいたようにハッとすると、顔を赤くして口に手を当てた。
「なんだ、まだキスだけだ。倒れそうなのを今くらいは動けるようにしてやっただけ。キスくらい何も気にすることは無いだろう。」
「そ、そんな……」
「…そうか、お前……」
悪魔はさらに唇を歪めて笑うと、何も出来ずにいる娘を抱きあげて屋敷の中に入った。
ここは悪魔が棲むと言われ、今はもう近づく者はいない屋敷だ。
辺りは暗く、月明かりだけが照らしている。
「また人間か…俺見たさに肝試しにでもきたか?脅し、逃げ帰るのは見飽きた。」
衣服もすべて黒で統一され、肌は文字通り、血が通っていないように真白。細身の男が、霧のようにどこからともなく現れた。
「あ、悪魔…さん……?」
娘は怯えたように小さく掠れた声で問いかける。顔色は悪く、足は震え、今にも倒れそうだった。
「俺を『さん』付けする人間は珍しい。…何しに来た?」
「あ、あの…お願いがあって来ました……」
「願いか…貧民の娘だな。金か?美貌か?」
少し呆れたように男は言う。すると娘は首をそっと振って言った。
「いいえ…悪魔であるあなたなら、私の願いを聞いてくれるかと……私を少し、生き延びさせてほしいのです……」
「は??」
「私は病気で、長く生きられないと言われているんです…半年持つかどうか、と…。でも私にはどうしても、まだしなければならないことがあって…だから、どうか……!」
娘は必死に頼んだ。しかし悪魔と呼ばれる男はバカにしたように娘に言った。
「悪魔なら出来るだろうとわざわざきたのか。お前もどうせ、自分の為だろう。」
「それは……」
「バカな人間だ、悪魔に頼み事をするなんてな…ま、願いは一つだけだ。代償はもらうぞ?」
言い淀んだ娘を気にする事なく、悪魔は楽しそうに考えを巡らせている。
「そうだな…どうせお前に生気を与えてやるんだからな…」
悪魔は娘のすぐ目の前にいる。にやりと笑うと、すぐさま真顔になり、何でもないことのように娘の顎に手をやり、娘の唇と自分の唇を重ねた。
「っ…!!」
娘は気づいたようにハッとすると、顔を赤くして口に手を当てた。
「なんだ、まだキスだけだ。倒れそうなのを今くらいは動けるようにしてやっただけ。キスくらい何も気にすることは無いだろう。」
「そ、そんな……」
「…そうか、お前……」
悪魔はさらに唇を歪めて笑うと、何も出来ずにいる娘を抱きあげて屋敷の中に入った。
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