唇を濡らす冷めない熱
それが出来ていれば苦労はしない、何度も頼んでもこの結果が変わらないという事を知らないくせに。
簡単にああしろこうしろなんて部外者が口を挟まないで欲しいものだわ。
「分かるんでしょう? 横井さんにはまだ荷が重いと思って言ってあげてるんじゃない」
「荷が重い……ですか?」
言われなくても、それも何度も部長に伝えましたよ。きっと信じてもらえないでしょうけれど。
親切ぶって本音は全然違う所にあるくせに、私をサポートから外したくてしょうがないだけなのにね。
「横井さんより私の方が梨ヶ瀬課長のサポートに相応しい、そう部長に伝えてくれればいいのよ。それくらい簡単でしょう?」
「それが本音ですか……」
割と早く自分の希望を言ってくれた先輩に呆れつつ、どうしたものかと考える。きっと「はい」というまでここから出す気はないのだろうし。
「何ですって!?」
「ねえ、ちょっと……篠根先輩、あの……」
意外と落ち着いたままの私の返事に腹を立てている先輩に、給湯室の外にいる別の女子社員が心配そうに声をかけている。
そう思っていたのだけど……
「何か楽しそうなことをしてるみたいだね、俺も混ぜてくれない?」
このピリピリとした雰囲気にそぐわない調子のよさげな明るい声音、これは間違いなく梨ヶ瀬さんのものだ。