唇を濡らす冷めない熱
「それは、その……」
梨ヶ瀬さんの質問の答えに迷う。今ここで先輩が嘘を言っていると言えば、先輩や外にいる女子社員は上司から注意を受けるだろう。
しかしこれだけ嫌がらせを受けて黙っていても、きっと彼女たちの行為を増長させるだけ。それならば……
「どうなの、横井さん?」
「……いいえ、ハッキリと篠根先輩に梨ヶ瀬さんのサポートを断るように言われました。そのうえ自分が相応しいと上司に口添えするようにとも」
そう言った瞬間、梨ヶ瀬さんの口角がクッと上がった事に気付く。どうやら彼が望んでいた答えを私は出すことが出来たみたいだ。
だけどそんな梨ヶ瀬さんとは反対に、真っ青になって震える篠根先輩。彼女は私をギラッとした目で睨むと……
「なんてことを言うの、横井さん! 嘘、嘘です! 横井さんは私が嫌いだからってそんなでたらめをっ!」
さっきまで私を威圧していた彼女は、なりふり構わず私を悪者にしようとしてくる。嘘なんて私は行ってないし、反省の色の無い彼女に私の中で何かがプチンと音を立てて切れた。
「嘘? 何が嘘なんですか? こうやって先輩が私を呼び出して言うことを聞かせようとしたことですか。それとも……この前、資料室に閉じ込めるなんて子供じみた嫌がらせをしたことですか?」
「……横井さん、貴女!!」