唇を濡らす冷めない熱
そんな眞杉さんを見て顔がにやけそうになるのを堪えていると、隣の席に今日の日替わり定食の乗ったトレーが置かれる。
隣に来たのが誰かなんて見なくても分かる自分が嫌になりそう。
「ここ、いいよね」
「聞く前に置いているじゃないですか、座る気満々ですよね?」
笑顔でそう言う梨ヶ瀬さんを見ようともせずに、言葉だけで返事をする。最初から疑問形ですらない言い方をしてるくせに、その声音だけは優しいから腹が立つ。
肩を竦めたような仕草をした後、梨ヶ瀬さんは私の隣に当然のように座って食事を始めた。眞杉さんの隣はもちろん鷹尾さんが占領して、鷹尾さんは必死に彼女に話しかけていた。
「頑張るね、鷹尾も」
「そうですね、よほど眞杉さんの事を真剣に想ってらっしゃるんでしょうね」
鷹尾さんが話しかけるたびに眞杉さんは怯えて固まっているようにも見えるが、それでも二人の想いは一方通行ではないはず。あと少し時間が必要なだけだ。
「俺もそのつもりなんだけど、相手にされてないのは何故だと思う?」
……それを私に聞くのはどんな意味があるのか。試されているのかもしれないと思うと、ちょっと気分が悪い。
「何故でしょうね? 私だったら梨ヶ瀬さんみたいな素敵な男性に告白されたら、喜んでOKしちゃいますけど」
「……嘘つき」