唇を濡らす冷めない熱
「あの、大丈夫ですか? 眞杉さんは少し人見知りな所があるので」
「……知ってる、これが最初なわけじゃないし」
なるほど。どうやらこの男性はかなり眞杉さんにご執心らしく、先程眞杉さんから逃げられたショックから立ち直れずにいるらしい。
しかし目の前の男性、スッキリとした短髪にキリッとした顔つきの清潔感のある人だと思うのだけど……眞杉さんは彼の事をなぜ避けるのだろう?
「仕方ないんだ、彼女に俺みたいな男はタイプじゃないってハッキリと断られてるし」
「え、あの眞杉さんがですか? それっていつの話です?」
あの大人しい眞杉さんが、どうしてこの男性を振ったりしたのだろう? つい最近、彼女が言っていた「彼氏が欲しい」という言葉はいったい何だったの?
「三年前の彼女の誕生日。あの日は俺としてはもの凄く気合を入れたんだ、だけどあっさりと振られて……その後はずっと逃げられてる」
「三年、ですか……?」
そんなに前からこの人は眞杉さん一筋なんだ……そこまで思われている彼女がちょっとだけ羨ましい気もしないでもない。まあ、眞杉さんが逃げてる理由を知らないからそう思えるのかもしれないけれど。
でもちょっとだけ報われて欲しい気もしないでもない。
「……ねえ、横井さん。ここまで話を聞いたんだから、コイツに協力してもいいと思ったりしない?」
「……はい? 私が、ですか?」