唇を濡らす冷めない熱
揺れない、この意思
それから梨ヶ瀬さんのサポートとして仕事をこなす毎日だったが、意外にも彼は仕事にプライベートを巻き込むことはしなくなった。
逆に不気味だと思い聞いてみたら、それも彼の作戦の内だったようで可愛いねと揶揄われてしまった。
「本当に意味が分かんない、グイグイ迫ってきたかと思えばピタリと止めるし。本当に私と付き合いたいなんてやっぱり嘘なんじゃないの?」
「そんな事になってたんですね。でもお二人、美男美女でお似合いだと思うけど?」
そんな吞気な事を言える眞杉さんが羨ましい、彼女だって私の立場だったら逃げたくなるでしょうに。
まあそんなのはあの鷹尾さんに挑む勇気が無ければ出来ないでしょうけれど。
「そういう眞杉さんと鷹尾さんもお似合いだと思うけれど? どうしてまだ付き合わないの?」
眞杉さんだっていい加減に鷹尾さんの気持ちは分かっているはず。二人がさっさと付き合ってしまえば、ダブルデートの話だって無くなるかもしれない。
そんな淡い期待を持ちつつ、眞杉さん達の今の状況に探りを入れてしまう。
「だって、私なんかが鷹尾さんの彼女なんて不相応っていうか……」
確かに眞杉さんは長い黒髪に分厚い黒縁の瓶底眼鏡、とても野暮ったい容姿をしていて地味ではある。
だが鷹尾さんはそんな眞杉さんの容姿ではなく彼女の内面にベタ惚れのようだけど。
でも、ふと考える。もしここで容姿に自信のない眞杉さんを変えることが出来たなら、もしかすると……もしかしするかもしれない?
「眞杉さん! 貴女が自信を持てるように、ちょっとだけ私にやらせてもらってもいいかな?」